販売のお知らせ

金継ぎの受付をしていると、たまに「直したいうつわは持っていないのだけど、金継ぎしてあるうつわは欲しい」と言う方がいらっしゃいます。美術品として捉えてくださっているからでしょう。「金継ぎっていいよね」って言ってくださってるようで、うれしいな、といつも思います。実際、そういう「商品」は、骨董品を扱うお店で販売されていることもあります。

また、わたしが金継ぎをお仕事にしているなかで、大事な軸にしていることのひとつが、「売り物にならなかったうつわを救いたい」という思いです。10年ほど九谷焼の製造・販売に携わってきましたが、窯の中でヒビが入ってしまったり(焼き切れ)、運送中に割れてしまったり、そういったことはしょっちゅうではないのですが、わりとよく見てきました。そういったうつわを金継ぎで直して、欲しいという方へお渡しすることができたら。その間には、「ものを大切にする」「金継ぎされている」という価値がうまれます。

それって絶対いいよね、と消費者側としては思うのですが、作家さんがどう思うか、も大切です。壊れたら買う、というサイクルでまた作ることができているという面もあるでしょうし、直されては困る、と言われても仕方ないお仕事なんじゃないか、と頭のすみに実はいつもあります。なので、金継ぎを受け入れてくださるかどうかは、作家さん次第なんです。

今回、お直しさせていただいたのは、田辺京子さんのうつわです。春ららら市を主催されている岩本歩弓さんからご依頼いただきました。入荷の際にヒビが入ってしまったとのことで、金継ぎして販売できたら、とまさにわたしがやりたかったことをお話しくださったので、前のめりで「ぜひ!」とお返事し、お預かりしました。

4月に春ららら市で田辺京子さんにお会いし、このことをお伝えしたら「どーぞどーぞ」という感じでさらりと快諾くださり、金継ぎしたうつわを販売できることになりました。

今回の企画は、同じ価値観を共有してくださる方によろこんでいただけたらうれしいと思っています。まったくきれいな新品より、一度ヒビが入った金継ぎ品の方が高いです。売れるかどうかは金継ぎの魅力にかかっている気がして、ちょっと震えます。

金継ぎホの秘めた挑戦と、入手困難な田辺京子さんの貴重なうつわがひとつ蘇ったよろこびに共感してくださる方がいらっしゃいますように。同じものはひとつとない限定品、ただいま陳列中です。


オトメの金沢 陳列室

田辺京子/TANABE Kyoko

「おわんちゃわんの立ち気味ワン」

ヒビ 7㎝

純金消粉仕上げ

¥14,800


内側は、生漆をしみ込ませてヒビ止めのみ。絵付けを消さないように。
田辺さんの染付の線と馴染むよう、なるべく細く仕上げています。ゆるゆると。